脚立の上の王様

主に脚立の上に存在します。舞台照明家のはしくれとしてエンタメ業界の底辺の端っこをちょっとだけ支えています。ふらっと海に出たり旅立ったりします。

最近のお仕事

4/3〜7まで照明デザイナー、本番オペレーターとして関わりました、角角ストロガのフ「エイプリル」@吉祥寺シアター無事に幕を降ろしました。

・・・無事に?

お芝居を見るといつも思っているのですが、今回は心の底から「役者ってすごいなあ」と。
まあそれはね、お客さんにはあまり関係のないポイントについてなのかもしれませんが。
今回は珍しく稽古場に長くつけたのですが、あのカオスな稽古場から(あの短い間に)ここまでのクオリティーの作品を造り上げる勢いと集中力。
結構感動ものでした。

いろいろ決まりきらないまま劇場に入り、時間の限られる中で作品に対してどういうアプロチーがいいのか考えていました。
自分のやったことが正解だったのかはいまでも分かりません。
作った明かりについても正直満足はしていません。

ただ主演のいしだ壱成さんには「ステージを重ねるごとにだんだん自分の感覚と照明の変化が重なりあってきて、鳥肌が立つくらい気持ちのいい瞬間も何度かありました」みたたいなことを言っていただきました。
様々な事情から今回は、絵面としての照明の造形的な部分を多少捨てても、舞台上で演じている役者の呼吸や感情や肉体、いわゆるライブ感を重視して明かりをつくっていたので、そこを役者さんにも感じていただけたのであればこれほどうれしいことはありません。

その分、流れを外してしまったと感じる瞬間も普段と比べると多かったですし、オペレーターとしては非常に集中力のいる負担の大きい作品ではありました。
家に帰ると毎晩眠くて仕方なかったです。
初日開けると普通はかなり楽になのですが、今回は千穐楽まで精神的な疲れは半端なかったですね。

演出家の角田ルミさんもとても興味深い人でした。
演出家という生き物は、基本的に変わった人が多いのですが、ぼくがこれまで出会った中でもかなりハイレベルに面白い人でした。

最初の顔合わせの時に「わたし周りの人をすごくイラッとさせるみたいなんですよね〜」とにこやかに語っていた言葉の意味は充分体感しました。
「これまでの照明さんってみんな、場当たりやってると半ギレするんですよね〜」(ぼくはその点冷静に対応してくれましたという褒め言葉なんですが)というお言葉にも「そうですね。半ギレになったみなさんの気持ちはよく分かります」とお返事させていただきました。

そんなもろもろ含めて、もし次回もご縁があれば、試してみたいことやってみたいこともいくつか心に浮かんだりしますし、とても刺激的な公演であったことは間違いありません。
偶然とはいえ関われて本当によかったです。
これからも彼女を観察する機会があるとうれしいですし、一緒に作品作れたらなあとは(いまのところは)思っています。