宮崎芸術劇場「三文オペラ」上演中止にいて
最初にこのことを知ったのはFBで友人がシェアしていたこの記事でした。
作品内容に対して著作権者との協議が不調に終わり上演ができなくなるというのはごくまれにですがあります。
上演契約を結んだ時点では作品の演出プラン自体は著作権者には提示されていないことが多いので(タイミング的にそこまで内容は決まっていない)、その後提示された演出プランに対して著作権者がNOの意思表示するというパターンです。
なので比較的上演が近づいてから公演中止になることが多いです。
ぼくが個人的に知っている例だと、もう20年ほど前に青山円形劇場で上演予定だったテネシー・ウイリアムスの「欲望という名の電車」が公演中止になったことがあります。
この作品は主人公のブランチを現代演劇の女形として活躍する篠井英介さんが演じる予定でした。
しかし実はこの作品には原作者から「女役は女優、男役は男優を必ず配役する」という指定がありそこが問題となって上演許可がおりませんでした。
ぼくの記憶だとたしか上演の一ヶ月くらい前に中止が決定したと思います。
この話には後日談があり、なんとかして篠井英介ブランチでの上演を実現したかった関係者は著作権者を訪ねて説得し、女形という日本独特の文化について説明し、また演技を見てもらい、2001年に許諾を得て上演することにこぎつけました。
最初のポストを見てからしばらくして、当日劇場を訪れた何人かの方がブログなどで情報発信しているのを見ました。
それによると2/5の公演初日、近いお客さんが普通に入場し開演直前の満席状態で中止が告げられたみたいです。
演出家やディレクターからの事情説明の後、舞台では出演俳優によるパフォーマンスが披露されたそうです。
理由はフルオーケストラによる全楽曲の演奏、脚本の改変禁止などが上演契約に盛り込まれていたということです。
開演直前まで交渉をしていたとのことですが・・やはりこの対応はちょっとどうかと思います。
この公演は宮崎だけでなく福島県のいわき市と横浜市での上演も予定されているのですがそちらの中止の情報は2/6時点ではまだでていないそうです。
SNSなどでは「フルオケじゃなくてもいいから上演して欲しかった」などの意見も散見されましたが、契約上の問題なので上演の許諾をとれなかった制作側の責任の方が大きいと思います。
詳細は以下のリンクにまとめられています。
さて今回の上演中止について、著作権に詳しい弁護士の福井健策さんはこんなツイートをしています。
作者のブレヒトもクルトヴァイルも死後60年以上経過し、戦時加算を含めてもパブリックドメイン。ラップやレゲエを取り入れたらしいので、著作者人格権を持ち出されたか?
— 福井健策 FUKUI, Kensaku (@fukuikensaku) 2016, 2月 6
RT 上演直前に中止 権利問題了承得られずhttps://t.co/gM01xY6v0D
上演権についてはこの辺りも参考になりますね。
権利関係については日本では割と軽く見られることも多いですし、海外の著作権利者とのやりとりにあたってのいい事例にもなるので、できれば公演中止までの経緯についてできる範囲で公開してもらえるとうれしいと思います。