脚立の上の王様

主に脚立の上に存在します。舞台照明家のはしくれとしてエンタメ業界の底辺の端っこをちょっとだけ支えています。ふらっと海に出たり旅立ったりします。

舞台照明デザインってなにするの?

最近、業界外の人に「舞台照明デザイナー」 ですと名乗ることが増えました。
なので「どういう仕事」と聞かれることも増えました。
なかなか説明しづらいんですけどね。

例えば、去年の12月に日本スタンダップコメディ協会会長、清水宏さんのトークライブの照明デザインをやらせていただきました。

natalie.mu

出演者一人がしゃべりつづけるだけの構成なので、お芝居などと違って照明もそれほど変化させたりすることもなく、ただ出演者が明るく見えるようにしてあるだけでした。

本番を見ていると清水さんの移動範囲がぼくがイメージしていたのよりもかなり客席寄りになっていました。

普通、俳優さんやコメディアンの方は舞台の客席よりギリギリまでは使いません。
舞台は明るくて客席は暗いので足元が危ないからです。
また舞台前ギリギリだと照明の照らす角度がよくなかったり、当てられる台数が少なくなったりで少し暗くなってしまうからです。

清水さんは元々、熱量高く演じるタイプの方です。
リハーサルと比べると、舞台の踏面ギリギリまで出てきて、前のめりにお客さんと相対してしゃべります。

当然、姿勢によっては時々顔への照明が少し暗くなる瞬間が出てきます。
シーンによっては明るくなったり暗くなったりを頻繁に繰り返すことになるので、これは少し見にくいので本番が終わったら暗いエリアをフォローするライトを追加しようと考えていました。

けれどしばらく見ていて気が変わりました。
普通、そういうところには立たないのです。
そこまで前のめりにはならないのです。
だけどそこを外れてしまうのが、エリアからはみ出してしまうのが清水宏さんというアーティスト。

彼が動くエリアを全て同じような明るさにするのは技術的には簡単ですが、エリアからはみ出す清水さんのエネルギーを視覚的に表現するにはあえて暗い場所を残しておいたほうがいいんじゃないかと。
そこに違和感を感じてもらったほうが清水宏の生き様が伝わるのではないかと。

こういうのが舞台照明デザインです。